道路より高い・低い位置にある土地の相続税評価額は減額される?
道路の側面に擁壁があり、その上の土地にアパートが建っていたり、道路の片側が崖になっていてその下の土地に一戸建てが建っていたりすることがあります。前面の道路よりも高い・低い土地は各地に存在しますが、このような土地の評価額はどうなるのでしょうか。今回は、道路との高低差がある土地の相続税評価額の考え方について解説します。
なぜ道路より高い・低い土地は評価額が減額されるのか
坂道が多い地域や山間部に近い地域では、山林や丘陵だった土地を開発して宅地にされているケースが多くあります。このような地域の土地は、道路との高低差が大きい場合があり、一般的な土地と比較して利便性が悪いと見なされます。相続税の財産評価では、このような土地については評価額が減額されることがあります。
【国税庁】
利用価値が著しく低下している宅地の評価
(前略)利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、(中略)利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。
1道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(後略)
つまり、通常の土地の評価額から10%減額され、90%の評価額で申告しても良いということです。
なぜ、高低差のある土地は評価額を減額できるのでしょうか。例えば道路よりも高い所にある土地で、その道路を車の通行で使いたい場合、建物の下に駐車場をつくったり、道路に出るまでの階段やスロープをつくったりするための費用がかかります。
また更地に住宅を建てる場合は建築資材を運ぶための時間や手間がかかり、場合によってはクレーンなどの重機を使う必要が生じます。
こういった費用がかかる可能性があるため、通常の評価額からその費用に相当する額として10%の減額が認められているのです。このような土地は相続税評価の際だけではなく、通常の売買の際も価格が相場よりも安くなることがあります。
どのような理由であれば減額できるか
では、どの程度の高低差があれば「利用価値が著しく低下している」と見なされるのでしょうか。
その基準の1つに、「路線価・固定資産税評価額・倍率」があります。土地の相続税評価は、路線価地域であれば「路線価」、倍率地域であれば「固定資産税評価額・倍率」を基に計算されます。該当地の路線価や倍率が周辺の土地と比較して低い場合、該当地の道路との高低差がそれに反映されているため10%の減額は認められません。
高低差が路線価や倍率に反映されていない場合は、どれくらいの高低差があるのかを確認した上で、周辺の土地と比較して利用価値が著しく低くなっているかどうかを判断することになりますが、その判断は非常に難しいです。
国税不服審判所で何件も適用可否が争われていますが、高低差の影響で該当地のみ車両進入できないことや、接道の幅員やその路面状況が周辺の土地と差があるなどの理由で適用が認められたケースもあります。一方、道路よりも高い位置に土地はあるものの、同じ路線価が設定されている周辺の土地の約7割が同様の高低差があるという理由で適用が認められなかったケースもあります。
また、日当たり・風通し・眺望を良くする目的で盛土をした場合などは、本来の減額の趣旨とは相容れないという判例も出ています。
土地周辺の様々な状況を確認する必要がある
このように、該当地だけではなく周辺の土地の状況も減額の適用可否の判断に影響を及ぼします。こういった土地の評価方法については、土地の相続税評価に精通している専門家の判断を仰ぐ必要があるでしょう。