がけ地がある土地の相続税評価額の計算方法

土地には、その一部に凹凸や傾斜を含むものがあります。相続財産としての土地の評価では、所有している土地に平坦な部分と「がけ」が存在する場合、通常とは異なる方法で評価します。今回は、「がけ地等を有する宅地」の評価方法について解説します。

平坦な土地とがけ地が一体となっている土地

日本には、山林や丘陵地帯を開発して住宅地にしているエリアが多くあります。一定の面積を平坦にすれば住宅を建てられるようになりますが、造成の際にすべてを平たんにするとその分費用かかってしまうため、一部に傾斜部分が残っている土地があります。

このような土地は、傾斜部分に建物が建てられないため「がけ地等を有する宅地の評価」という決まりによって、その部分については評価を下げることができるようになっています。

この評価方法を適用できるのは、あくまでも宅地の中に「がけ地等」がある場合です。また、相続発生時に宅地として利用されていた土地には適用されますが、農地・山林や、草が生い茂っているだけの「雑種地」に該当する土地には適用されません。 

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評価額の計算方法と減額割合

このような土地が相続発生時に宅地として利用されていた場合は、以下の手順で評価を行います。

1.土地全体の地積を把握する
土地の全部事項証明書(登記簿謄本)に記載されている地積を確認する、現況の地積を測量するなどして、所有している土地全体の地積を把握します。

2.がけ地部分の地積を確認する
がけ地部分を測量することでも確認できますが、平坦な部分の地積を測量して土地全体の地積から差し引くことで、がけ地部分の地積を求めることもできます。

3.「がけ地割合」を計算する
「がけ地部分の地積/土地全体の地積」でがけ地割合を算出します。この割合によって、後述の「がけ地補正率」が決まります。

4.がけ地がどの方角を向いているか確認する
がけ地補正率はがけ地の方角によっても変わるため、方位計などでがけ地の方角を確認します。

5.がけ地補正率を考慮した土地の評価を行う
「1㎡あたりの土地の評価額×がけ地補正率」で、がけ地を考慮した該当地の評価額を計算します。これに地積を掛けることで、相続税評価額が求められます。

例えば、路線価15万円の道路に面していて地積300㎡、がけ地部分の地積65㎡、がけ地が南を向いている土地の計算方法は以下のとおりです(他の補正率等の適用はないものとします)。

  • 65㎡/300㎡≒0.21
  • がけ地割合0.20以上でがけ地南向きの場合の補正率:0.92
  • 路線価15万円×0.92=13万8,000円
  • 13万8,000円×300㎡=4,140万円

【がけ地補正率】

がけ地割合がけ地の方位
西
0.10以上0.20未満0.960.950.940.93
0.20 以上0.30未満0.920.910.900.88
0.30 以上0.40未満0.880.870.860.83
0.40 以上0.50未満0.850.840.820.78
0.50 以上0.60未満0.820.810.780.73
0.60 以上0.70未満0.790.770.740.68
0.70 以上0.80未満0.760.740.700.63
0.80 以上0.90未満0.730.700.660.58
0.90 以上0.700.650.600.53

これが基本的な計算の流れですが、1つの土地にがけ地が複数ある場合もあり、また必ずしも「真南」「真東」を向いているとは限りません。このような場合は、以下の方法でがけ地補正率を求めます。

・複数方向にがけ地がある場合
全体の地積に対するがけ地部分の各方角別のがけ地補正率を求めて、それぞれのがけ地補正率を方角別のがけ地の地積で加重平均する。

【例】全体の地積400㎡のうち、西向き・南向きにそれぞれがけ地が100㎡ある場合

・がけ地割合:(100㎡+100㎡)/400㎡=0.50
・がけ地補正率:西向きがけ地の補正率0.78×100㎡+南向きがけ地の補正率0.82×100㎡/全体のがけ地200㎡=0.80

・がけ地が方角の中間に向いている場合
それぞれの方位のがけ地補正率を平均する。

【例】全体の地積400㎡のうち、がけ地100㎡が南東を向いている場合

・がけ地割合:100㎡/400㎡=0.25
・がけ地補正率:(南向きの補正率0.92+東向きの補正率0.91)/2=0.915
→0.91(小数点2位未満切り捨て) 

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あくまでも一体評価をする場合に減額できる

このように、土地にがけ地がある場合は相続税評価額を減額できますが、前述のとおり宅地として利用している土地であることが適用の要件となります。宅地として利用している場合でも、がけ地部分が「雑種地・山林」と見なされる場合は、その部分の土地は宅地と分けて評価されるため、がけ地補正率は適用されません。

このような土地の相続税評価額の計算は複雑になることが多いので、専門家へ依頼することをおすすめします。