相続財産は不動産ばかり。現金一括納付ができない場合はどうなる?

相続税の支払いは、原則として現金での一括納付となります。そのため、相続した財産が不動産ばかりで、かつ現預金がほとんどない場合、相続税の支払いに困ることになります。そんな時の選択肢について解説していきます。

まず、相続税がかかるかどうか計算する

遺産相続した人のすべてに相続税がかかるわけではありません。相続が発生したら、まずは借金や生前分与の分も含めて、被相続人(亡くなった人)の遺産がどれだけあるかをすべて洗い出す必要があります。

その上で、相続人全員で遺産分割の協議を行います。相続税は受け取った相続財産の総額から計算されるため、誰がどの財産を相続するかが決まったときにはじめて支払うべき相続税の計算も可能になります。その結果、相続税が多額になることが判明し、納税資金が足りないことがわかったら、対応策を考えることになります。取るべき選択肢としては以下の4つがあります。 

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選択肢1:不動産を売却して納税資金を確保する

まず、相続した不動産を売却して資金を確保する方法が考えられます。ただしこれは、実際にやるとなると難しいことが多いです。理由として、相続発生から10か月以内の相続税納付までの間に相続した不動産の売却を完了させなければならない、という事があげられます。

第一に、相続した不動産を売却するには、まず遺産分割協議を行って相続人を決定させる必要があります。その後、不動産の名義人を、相続人に変更し、完了後に不動産仲介会社へ連絡をして売却を依頼します。

売却を依頼しても、その物件がすぐに売れるとは限りません。人気の立地にある需要の高い物件で、かつ相場以下の価格で売りに出せば買い手が現れるのは早いかもしれませんが、そうでない場合はどうしても時間がかかってしまいます。買い手が現れたとしても、購入条件がまとまり、不動産売買契約を締結して、残金決済に至るまでには通常1カ月前後かかります。

相続税は、相続の発生から10カ月以内に申告し納付する必要があるので、売却活動はかなり急ピッチで進める必要があります。納税期限までに売るために、やむなく値下げをしなければならない場合もあるでしょう。あるいは不動産会社に買い取ってもらう方法もありますが、その場合も相場より安い価格になってしまうことがほとんどです。 

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選択肢2:延納する

納税期限までに不動産を売るなどの何らかの手段で納税資金を用意することが難しい場合には、「延納」という方法もあります。税務署に申請して、相続税の納付を分割払いにしてもらうことです。相続財産に占める不動産の割合が75%以上の場合、延納できる期間は最長20年です。ただし、延納税(利子)が追加でかかるのと、延納する税額に相当する担保を提供する必要があります。 

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選択肢3:銀行からお金を借りる

銀行からお金を借りて納税する方法もあります。ただしこの場合も、金額によっては担保を提供する必要があり、返済期間中は利息の支払いが発生します。金利や返済期間の条件を比べると、銀行で借り入れるよりも延納を選んだほうが有利といえる。よく比較検討するようにしましょう。 

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選択肢4:不動産を物納する

相続税をお金で納められない場合、不動産そのものを「物納」というかたちで納める方法もあります。ただし、不動産を物納するにはいくつかの要件があります。まず、延納をしても納税できない理由があること。そして、物納しようとする不動産が、以下のような「管理処分不適格財産」に該当しないものであることです。

【管理処分不適格財産】
・抵当権が設定されている不動産
・所有権が明らかになっていない不動産
・境界が明らかでない土地
・隣接する不動産の所有者などとの間にトラブルがあり通常の使用ができない不動産
・借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明である場合
・耐用年数を経過している建物(通常の使用ができるものを除く)
・暴力団などが関係する不動産

他にもいくつかの条件が「管理処分不適格財産」として挙げられています。要するに、すぐに売れる不動産以外は税務署側も納めてほしくないということでしょう。 

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一般的には「物納」よりも「売却」のほうが得策

結局のところ、どの選択肢をとるべきかと言えば、基本的には不動産を売却して納税するべきで、不動産そのものを納める物納は最後の手段といえるでしょう。

物納の際、不動産は相続税評価額で評価されてしまいます。相続税評価額は市場価格の6~8割になることが一般的です。つまり、「不動産を市場価格で売却してから納税する」ほうが、「不動産を物納する」よりも、最終的に手元に残るお金が多くなるのです。

とはいえ、なかには「相続した不動産が田舎の土地ばかり」で、すぐに売却できないケースもあるでしょう。そのような場合は物納も検討していいのではないでしょうか。いずれにしても、相続が発生する前から対策を考えておくことが大切です。