相続時に婚外子が現れた場合、どのように対処するか

テレビドラマでよくあるのが、被相続人が死亡し遺族が諸々の手続きを行うタイミングで急に婚外子(隠し子)の存在が明らかになるケースです。妻や実子にしてみれば切実な問題ですが、相続ではどのように対処すべきなのでしょうか。

婚外子の定義は?

婚外子とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子どものことで、非嫡出子や私生児とも呼ばれます。

婚外子というと、これまでは愛人との間に生まれた子どもというイメージがありましたが、最近ではライフスタイルの変化によって、両親自らの選択によって婚外子になるケースなども多くなってきました。

  • 夫婦別姓を守るために婚姻届を出していない状態で子どもが生まれるケース
  • 結婚は望まないが子どもは欲しくて一人で子を産みシングルマザーになるケース

などがあります。

厚生労働省が調査した「平成25年度厚生労働白書」によると、日本における婚外子の比率は2.1%と極めて低いです。上位を見ると、スウェーデン54.7%、フランス52.6%、デンマーク46.2%、英国43.7%、オランダ41.2%と、日本とは大きく離れた結果が出ています。この結果から、日本とは異なり、欧州では婚姻関係にとらわれない事実婚の考え方が広く浸透していることがわかります。このような結果が出ることには、各国の制度として、そのようなニーズにこたえる行政の仕組みが確立していることが大きく寄与しています。一方で日本では、今回のテーマである相続問題に関しても、少しずつ制度の整備が進んではいるものの、まだまだ婚外子や事実婚への対応策が十分には充実していないというのが実情です。 

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婚外子に相続権はあるのか

父親に隠し子がいることを知った子どもが気になるのは、婚外子に相続権はあるかどうかでしょう。

婚外子は非嫡出子と呼ばれるように、実子(嫡出子)とは長い間区別されてきました。かつては相続権も実子の半分しか与えられていなかったため、「法の下の平等に反する」との声も挙がっていました。

2013(平成25)年9月4日、最高裁大法廷において婚外子の相続権に差があるのは違憲であるとの判決が下されました。同年12月5日に民法の一部が改正され、現在では婚外子も実子と同等に相続できるようになっています。

婚外子が相続できるケースとは

同等になったとはいえ、無条件に相続できるわけではありません。婚外子が父親の遺産を相続するには、父親によって自身の子としての認知がなされている必要があります。婚外子を産んだ女性は、出産したという事実によって母親に認定されますが、父親は婚姻関係になければ父親と確定することができないからです。

父親が認知しない限り戸籍の父の欄は空欄のままであり、婚外子は相続ができません。認知されれば戸籍に父親の名前が載るので、子どもとしての相続権が発生します。

認知していなくても、遺言書に婚外子に相続させることを明記している場合は、婚外子は相続できます。相続の方法まで指定してあれば、余計な協議をする必要もありません。ただし、法定相続では妻が2分の1を相続し、残りの2分の1を子どもの数で分けることになっており、婚外子に相続させると他の子どもの相続分が少なくなるため、諍いに発展しやすく、スムーズに相続を実行するのは難しいのが現実です。

円満に話し合い、穏当な相続をするために

問題は、婚外子が認知されていない場合です。愛人や内縁の妻は法定相続人になれないため、被相続人名義のマンションに住んでいた場合は、法定相続人が相続することによって退去しなければなりません。

その場合、居住権を盾にとって明け渡しを拒否するケースが考えられます。人道的に考えると、住む場所がなくなって困ることがわかっていながら、強制的に退去させることは難しいでしょう。相手の資産状況にもよりますが、生活に余裕がないようであれば、現金で相続した分から転居費用に相当する金銭を渡し、円満に退去してもらうのが理想です。

被相続人にできることは、生前に婚外子がいることを告白して認知しておくこと、または遺言書に相続について明記しておくことです。話しにくいことではありますが残された家族が無用な相続争いをしなくて済むように、被相続人は早めに対処しておくべきでしょう。 

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