相続した土地を分筆するには?費用や注意点を解説
相続した土地をそのままの広さで使うのではなく、いくつかに分割したうえで、活用・売却したいというケースがあります。そのような時は「分筆」の手続きが必要です。実際に分筆をするには、どのような手続きが必要で、どのくらい費用がかかるのでしょうか?
なぜ、相続した土地を分筆する必要があるのか
分筆(ぶんぴつ)とは、不動産に関する情報が記載されている「登記簿謄本」上で1つの土地を複数に分割することを意味します。では、どのような場合に、相続した土地を分筆する必要があるのでしょうか。
考えられるのは、1つの土地を複数の相続人で相続する場合です。これを「現物分割」といいます。1筆の土地をいくつかに分筆し、各相続人に割り当てることで、各相続人は分割された一部の土地の所有者として登記できるようになります。
登記をして土地の所有権を明確にすることで、相続した土地を売却したり、土地の上に建物を建てたり、土地を担保に融資を受けたりできるのです。
一方で、不動産の相続方法として、分筆するのではなく、相続人の間で共同所有し、活用するという方法も考えられます。しかし、共同所有は後々トラブルになる可能性が少なくありません。いまは相続人同士の関係がよくても、それがずっと続くとは限らないからです。また、その次の代になると更に共同所有する人数が増える可能性があり、トラブルになる可能性が拡大します。きちんと分筆し、単独所有にしておくことで、将来のトラブルを避けることにつながるでしょう。
土地を分筆する際の手順
相続した土地を分筆する際の基本的な手順は以下のとおりです。
(1)遺産分割協議を行う
まず、相続人全員で遺産分割協議を行い、どの遺産を誰が相続するかを決めます。不動産を複数の人数で分けることになった場合、分筆する必要が出てきます。
(2)境界確定測量を行い、遺産分割協議書を作成する
土地をどう分筆するかを決めるためには、正確な境界確定測量図面が必要になります。そのために、境界確定測量を行い、その後、作成した図面を添付して遺産分割協議書を作成します。
なお、遺産分割協議の内容を「分筆した後の土地を各自が取得する」にしておくと、分筆前の土地の相続登記を共有名義にする必要がなくなり、手間が省けます。
(3)分筆登記を行う
遺産分割協議書のとおりに分筆登記を行います。
分筆登記には手間がかかるため、完了までにかなりの時間を要します。特に境界確定測量は、隣地の所有者にも協力を得なければならず、最短でも3ヵ月ほどかかるのが通常です。相続が発生したらすぐに準備を進める必要があると考えてください。
土地を分筆するためにかかる費用
土地を分筆するための費用はどれくらいかかるのでしょうか。
相続のケースにかかわらず、土地を分筆する場合、測量にかかる費用や登記費用、登録免許税が発生します。なかでも意外と高額なのが測量費用です。
測量は専門家の土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。日本土地家屋調査士連合会のアンケート調査によれば、485平米の土地分筆登記(測量資料作成含む)にかかる報酬額の全国平均は、約48万円となっています。
この報酬額には、測量調査や図面作成、登記申請にかかる報酬から収入印紙代(登録免許税)、交通費、境界杭購入などの実費が含まれています。つまり、土地の広さや現場の状況などに応じて報酬額は変動するのです。さらに依頼する調査士によって、数十万円から百数十万円程度と報酬額に幅があります。
また、土地分筆登記にかかる一連の費用とは別に、相続による所有権移転登記の登録免許税も必要で、「固定資産税評価額×0.4%」が基本です。少額の土地を相続により取得した時は、免税になる場合もあります。
土地を分筆する際の注意点
分筆する際には、どのように土地を分けるのか、よく検討することが重要です。きれいな土地ばかりではなく、不整形な土地の場合もあるほか、分筆の際、接道義務を満たさない土地を作ってしまうとその土地に建物を建てたり再建築不可になる可能性があるためです。
また、手順としては、相続の前に分筆登記を行うようにします。分筆登記→1筆ごとの相続登記の順で行うことで、元の土地の相続登記を省略できるからです。
もし元の土地の相続登記を先にしてしまった場合、相続登記→分筆登記→1筆ごとの遺産分割による所有権移転登記と3回分の手数料と手間がかかってしまいます。もちろん、ケースによって異なりますので、分筆を検討している場合は、早めに司法書士や土地家屋調査士に相談しましょう。
よく検討・準備のうえで分筆を
相続した土地を分筆するには、手間とコストがかかります。さらに相続が発生して間もない時期に、手続きを進めないといけません。将来的に、土地を複数の相続人に分けて相続する可能性があるのなら、相続が発生する前に境界確定測量を行い、遺産分割や分筆の仕方を話し合っておくべきでしょう。