債務に相続税はかかる?控除される財産とその種類について
相続時には、相続財産の分配とともに、すべての相続人が「相続税」について考えなければなりません。あらかじめ相続税について理解しておかないと、相続した後になってから高額な相続税に悩まされることにもなりかねません。できることなら、事前に相続税についての理解を深めておき、適切に対応できるよう準備を進めておくことが望ましいでしょう。
そもそも相続財産は、大きく「プラスの財産」と「マイナスの財産」に分けることができます。プラスの財産とは、現金や土地、建物、有価証券などのことです。一方でマイナスの財産とは、借入金(借金)や税金の未納分などの負債を意味します。これらのうち、とくにマイナスの財産に類するものは、遺産総額から“控除される”という性質があります。
遺産総額から控除される主な債務
では、遺産総額から控除される債務等には、どのようなものがあるのでしょうか。具体的には、次のようなものが挙げられます。
金融機関や個人からの借り入れ
控除される代表的な債務としては、「金融機関や個人からの借り入れ」が挙げられます。相続人が亡くなったときに確実に存在している債務(亡くなった時点で確定している債務)は、遺産総額から差し引くことができます。
ただし、「保証債務」の場合は、相続開始日時点において確実な債務となっていないため、控除できない点に注意しておきましょう。ちなみに、「連帯債務」については、あらかじめ負担割合が定められているため、その負担割合に応じて遺産総額から控除できるとされています。その点、保証債務とは取り扱いが異なっていると理解しておきましょう。
税金の未納分
所得税、住民税、固定資産税等の税金の未納分についても控除の対象となります。具体的には、これらのうち相続開始日(相続人が亡くなった日)の後に支払い期限がくるものを、遺産総額から差し引くことができます。ただし、延滞税や加算税については差し引くことができません。あくまでも、被相続人に課せられる税金そのものが控除の対象となります。
葬式の費用(例外あり)
葬式の費用についても、遺産総額から差し引くことができます。この場合の葬式費用とは、主に次のようなものがあります。
(1)葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます)
(2) 遺体や遺骨の回送にかかった費用
(3) 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります)
(4) 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
(5) 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
ちなみに、下記の費用はこの場合の葬儀費用に含まれないので注意しましょう。
・香典返しのためにかかった費用
・初七日や法事などのためにかかった費用
・墓石や墓地の買い入れのためにかかった費用
・墓地を借りるためにかかった費用
【参考】葬儀費用で相続税を節税できる? 葬儀費用に含まれるものとは
入院・治療費
入院・治療費についても控除の対象となります。相続開始の日以前に被相続人が支払った入院・医療費はもちろん、相続開始後に支払った入院・医療費も、相続税の計算上、債務として控除することができるのです。ただし相続開始後の場合は、被相続人と医療費を支払った人が、生計を一にしていたことが条件となります。
控除分を加味して正しい計算を
相続税がかかる財産とかからない財産について理解しておけば、より正確な相続税の額を試算することができるようになります。控除についての正しい知識がなかったために、相続税を必要以上に納めることにならないよう、事前に概要を把握しておきましょう。分からないことがあれば、専門家に相談してみることも大切です。