【相続事例】空き家になった実家をどうしようのB様
埼玉県のB様(76歳、男性)からのご相談
空き家になってしまったご実家をどうすればよいかとご相談に来られたB様。
ご実家の敷地は約600坪で、実家の土地活用を検討していらっしゃいました。
土地活用というと、良く目につくのが大手アパート会社の賃貸アパート建築。
B様は過去にそうした大手のアパート専門会社でアパートを建築された経験をお持ちですが、今回はそうした会社様とは異なり地元の会社に相談に来られます。
B様の相談を受けたアドバイザーは、
「過去経験があるからといっていきなり土地活用という答えを出さずに少し立ち止まって見て財産全体の最適化を考えたほうが良い」
と助言をしました。
アドバイザー:
「土地活用はその不動産単体で考えるのではなく、そのほかにどのような資産を持っているかによって何をすべきかが変わってきます。
ご家族(相続人)の状況によっても変わります。
相続税はいくらかかるのか、納税資金は確保されているか、相続の時には誰にどの不動産を渡すのか、など総合的に考えないといけません」
このように相続時の不動産の分け方の難しさについて説明されたB様は、アドバイザーに「実は過去に相続でもめた経験があるんです」と打ち明けました。
先代の相続の際に、B様は先代がお持ちの不動産のほとんどを相続することが決まっていらっしゃいました。
ですが相続人のうちに代襲相続が起きている甥Eがおり(三男Dがすでに他界)、その甥Eから遺留分の請求を受けて話は家庭裁判所に持ち込まれることに。
もう一人の弟Cもその話に乗って来て、「相続分を多くしてほしい」と言い始めて相続問題が長期化したというものでした。
結局最終的には不動産を予定通り相続することはできず、他の相続人の方たちに分与する形になりました。
ここでアドバイザーは「今回の土地活用を考えた経緯に立ち戻り何を優先すべきかを決めましょう」と提案をしました。
ポイントは「ご実家という単体の不動産をどう活用するかだけではなく、資産全体を考える」ことです。
このご実家をどうするのかという選択肢は、お持ちの資産状況、ご家族の状況、資産やご家族への思い入れなど感情面、
それぞれ整理したうえで対策を練らなければなりません。
例えば個々の不動産だけ考えると、
「収益性という観点」からみると最適であったかもしれない答えも
「家族仲から考えた分け方という観点」から見ると希望とは真逆のことをしていたということもあります。
個々の不動産だけ見ていると大局を見誤ってしまうのです。
さてB様のご状況をお聞きしながら優先順位を考えていきます。B様はご両親と奥様は既にお亡くなりになっており、家族は息子二人。
現在お持ちの不動産はそのほとんどが老朽化していたり、資産価値がない状態ではないかとのこと。
ご自身のために収益を上げたいというよりは、相続後に子供たちが困らないように交通整理をしてあげたいとお考えでした。
また基本的にご長男に不動産を相続させたいとお考えになられています。
これはご自身が体験された原体験からくるもの。
相続税を減らしたいということもありますが、それはどちらかというと二の次になっていました。
アドバイザーは
- 相続時に分割がしやすいようなもの
- 現状老朽化した資産が多いので資産のリニューアルを行う
- 今後の賃貸物件の需給バランス
を鑑みて分けやすく収益性も高い戸建賃貸を選択しつつ、
土地の分割案を数パターンシミュレーションして提案をしました。
またその分割案により相続税はどれくらい変わるのかなども併せて検討していきます。
B様も
「人口が減る中どうしても戸数を多くとるアパマンが安心して渡せない」
ということから戸建賃貸を選択されました。
加えて基本的にご長男に不動産を相続させたいという意向から、遺言書などで弟さんへの遺留分などに配慮することを忘れずに検討することを提案されました。
B様はアドバイザーから提案を受けてご家族で話し合いを持たれることにしたそうです。
お持ちの資産とご家族への思いも共有されたことで分け方はスムーズに進展しそうだと聞いています。
B様も今後の争い事になる可能性をなくせたことを感謝されました。
心の中では思っていてもご家族に話していない気持ちというのは多いものです。
そしてそのまま相続を迎えることで少しのすれ違いが大きな溝に発展することも多々あります。
相続を前に資産とその分け方についてきちんと話し合えるのは素晴らしいですね。
このままでは空き家でどうなるかわからなかったご実家も新たに住んでもらえる貸家に変わることになります。
ある人にとっては使わない不動産も他の人にとっては有用な不動産。
不動産が適切なタイミングで適切に活用してもらえる人に繋いでいければその地域の価値も保たれます。
相続で不幸になる人が減り、地域の不動産価値が守られますように。