遺言書があったら?遺言書の種類・効力・扱い時の注意点とは

「親族が亡くなって遺品を整理していたら、遺言書が見つかった…」
「親から手書きの遺言書を渡された…」
このような時、遺言書を託された側はどのように対応すれば良いのでしょうか。
本記事では、遺言書の種類、対応のしかたを解説します。もし遺言書が見つかっても、慌てて内容を確認するのではなく、まずは適切な取り扱い方を知りましょう。適切な場所で対応できれば、難しいことはありません。

遺言書には3種類ある

遺言書が効力を持つためには、民法に定められた形式を備えている必要があります。3種類の特徴や要件は以下のとおりです。

・自筆証書遺言

最も簡易的な方法です。「費用がかからない」「いつでも自分の好きなときにかける」という点がメリットになります。ただし、保管は自己責任です。しっかり保管して、誰かに遺言書の存在を伝えておかないと死後いつまでも見つからなかったり、紛失・破損してしまったりするおそれがあります。自筆証書遺言の要件は第一に遺言する本人(遺言者)が自分の手で書かなければいけないということです。本文は本人の自筆でなければ認められません。一方で、相続法改正により2019年1月13日付で自筆証書遺言の方式が緩和され、目録部分についてはパソコン等で作成したり、銀行通帳のコピーや登記情報等を添付したりして遺言者が署名・捺印すれば認められるようになりました。

【参考】民法改正で自筆証書遺言が作成しやすくなる!

しかし、本文の作成において、一部の記載を間違えたときに訂正する手続きは少し煩雑です。余白部分に訂正する場所と変更したことを追記して署名し、実際に変更した箇所には訂正印を押す必要があります。この訂正方法は慣れていないと間違える可能性があります。

・公正証書遺言

最も確実に遺言を遺せる方法として公正証書遺言が注目されています。日本公証人連合会の統計によると、公正証書遺言の数は2012年の8万8,000件から2018年の11万件と、6年間で 約1.25倍になっており増加傾向です。それだけ世間でも公正証書遺言の有効性と必要性が認知されてきているということになります。

公正証書遺言のメリットは、公証役場という公的な機関で保管されることです。そのため、紛失や破損のリスクがゼロに近くなります。また、公証人という法律のプロが作成するので「記載不備により法律的に無効」ということは考えにくいです。

公正証書遺言は公証役場に出向いて作成します。「遺言者がどんな遺言をしたいか」を公証人に口頭で述べ、公証人はそれを文章にするのです。このとき、証人2人の立会いが必要になります。作成した遺言書は遺言者と証人に読み聞かせて確認してもらうのが一般的です。確認した遺言者と証人は内容に相違がないことを証明する意味で署名捺印する必要があります。最後に公証人が民法に則って確かに手続きしたことを記載し署名捺印して完了です。

公正証書遺言のメリットをもう一つあげると、故人の関係者がその有無を調べられることです。遺言の存在を知らない相続人は想像以上に多いといえます。そういった埋もれてしまうことを防ぐために検索サービスが提供されているのです。

一方のデメリットは費用がかかることです。まず、公証人の手数料がかかります。遺言の目的とする財産の価額によって金額は異なり、例えば1,000万円を超えて3,000万円以下だと2万3,000円です。他にも証人を司法書士などの専門家に依頼する場合は、日当が発生します。

・秘密証書遺言

秘密証書遺言は上記の2つを折衷したような方法です。自分で遺言書を作成し、公証人役場に保管します。法律のプロが作成するわけではなく、公正証書遺言に比べて利用する人は少ない傾向です。具体的には、遺言者が自ら作成した遺言書に署名捺印し、同じ印鑑で封をします。それを公証人と2人の証人の前で、自分の遺言書であることと氏名・住所を述べるという遺言方法です。公証人が表紙を作り、この4人の関係者がそれぞれに署名捺印する必要があります。

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遺言書が見つかっても勝手に開封はNG

自筆証書遺言や秘密遺言書を発見した人は、家庭裁判所に提出して「検認」という手続きをしなければいけません。封がされている場合は、裁判所で相続人の立会いのもと開ける必要があるのです。このルールを破ると5万円以下の罰金を払わなければならなくなる可能性があるので注意しましょう。

検認とは、偽造や隠ぺいなどを防ぐため、遺言書の状態を確認し、内容を明らかにして他の相続人と共有する手続きです。遺言書の効力を判断するものではなく、検認したからといって有効な遺言書であることが確定するわけではありません。【解説動画】

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その他として、遺言書があっても遺留分の請求は可能 

遺産を誰がどれだけ相続するか決めるのに最も適した人は誰なのでしょうか。それは、財産を残す本人です。
民法では誰が財産を引き継ぐ相続人になるかが示されています。財産を引き継ぐ法定相続人になれるのは被相続人(亡くなったご本人)の配偶者のほか、子供(直系卑属)、父母(直系尊属)、兄弟姉妹(傍系血族)です。また、配偶者や子供などの親族のうち、誰がどのぐらいの按分で相続すべきかを決める法定相続分というルールがあります。ただし法定相続分はあくまでも基本的な指針であり、誰がどのような割合で財産を相続するかは相続人同士での遺産分割協議により変更することができます。

【参考】法定相続人とは?範囲・順位・相続分を解説

しかし、基本的に本人が生前にしたためた「想い」を実現するのが道義的には妥当なのかもしれません。日本の法制において遺言書は強い効力を持っており、だからこそ厳密な手続きが必要といえるでしょう。 法定相続分は遺族が相続時の財産分与でもめた際の目安であり、最も尊重される分割割合は、故人が生前に用意した遺言であるということは、冒頭で述べたとおりです。遺言がなく相続人同士が協議して決める場合や、協議が整わず裁判などで争うことになったら、法定相続分を基準にし、各々の主張にもとづいて調整します。

「遺言で割り振られた財産が少なすぎてどうしても納得できない」というときには一定の要件に従って遺留分侵害額請求(2019年7月1日以降に発生の相続について)が可能です。この権利を持っているのは兄弟姉妹以外の法定相続人で、相続人が直系尊属のみの場合は全相続財産の3分の1、それ以外の場合は2分の1までが対象となります。

【参考】遺留分とは?対象者・割合・請求方法(遺留分減殺請求)を解説

【解説動画】

例えば、配偶者と子どもがひとりいるのにもかかわらず、遺言で「遺産はすべて甥にゆずる」と書かれていた場合、この親子はこの甥に対して2人合わせて故人の財産の2分の1までの遺留分権を主張可能です。相続トラブルを防ぐためには、遺族がそれぞれに納得できるような遺言を書いておくことが重要になります。

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法令にのっとった遺言書を作って相続トラブルを防止する

遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、どれも民法で決められた要件を欠くと、無効になってしまう可能性があります。このうち公正証書遺言は法律の専門家である公証人が作り、保管するのでミスが考えにくいでしょう。他の2種類では裁判所で検認という手続きが必要です。遺言の内容に納得できなかったり、有効か無効かを争われたりして裁判となってしまう「相続トラブル」を防止するには、最低限の知識を持ちしっかり法令に則った手続きで遺言を作る必要があります。

【参考】「自分は無関係」は危険!相続トラブルの「ありがちな事例」と回避&解決術

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