線路沿いにある土地の相続税評価額は低くなる?

新幹線の高架付近にある土地や線路の近くにある土地、飛行場近辺で離着陸前後の飛行機が低い位置を通る土地など、騒音レベルの高い土地に住宅が建てられていることがあります。このような土地は、相続財産としての評価方法が通常の土地とは異なる場合があります。今回は「騒音のある土地」の評価方法について解説します。

電車の騒音で土地の評価額が下がる?

電車の線路近くや飛行場付近は、電車や飛行機が通るたびに騒音が発生します。相続税の財産評価においては、このような土地の評価額を減額できることがあります。

【国税庁】
利用価値が著しく低下している宅地の評価

(前略)利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、(中略)利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。

(中略)
4(中略)騒音(中略)等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

「周辺の土地と比較して騒音が大きいことが土地の価格に影響して、不利益を被ることが考えられる場合は、相続税の土地の評価額において通常の評価方法から10%減額できる」という内容です。一般的に騒音が少ないほうが住環境も良いとされ、騒音が大きい場所については売買価格も相対的に低くなる傾向があります。

ただし、該当地が路線価地域であれば「路線価」、倍率地域であれば「固定資産税評価額・倍率」が周辺の土地と比較して低い場合は、該当地の騒音などが価格に反映されていることになるので、10%の減額は認められません。 

どの程度の騒音が対象となるのか

「騒音がある」と言っても、人によってその基準は違います。どの程度の騒音であれば、この評価方法が適用できるのでしょうか。その判断基準の1つは前述の路線価などですが、ここでは他の判断基準の例を紹介します。

国税不服審判所 裁決要旨(平15.11.4東裁(諸)平15-95)

鉄道沿線の土地について、
①評価計算に採用された路線価が電車走行による振動及び騒音の要因を斟酌して評定されていないこと②鉄道沿線から20m範囲内では電車走行による騒音及び振動が環境省の騒音対策における指針である60デシベルを超えていること
③同地区に存する分譲地における分譲価額に開差が10%を超える取引事例が存在すること

からして、資産評価企画官情報による著しく利用価値の低下している宅地として、鉄道から20mの範囲内の部分について、その相続税評価額から10%を減額するのが相当である。

この裁決では「線路等から20m以内」で「騒音が60デジベル」という数値が示されており、判断基準の参考になります。

騒音については、以下のように定められています。

・騒音に係る環境基準について 

地域の類型基準値
昼間夜間
AA50デシベル以下40デシベル以下
A及びB55デシベル以下45デシベル以下
C60デシベル以下50デシベル以下

(注)
1.昼間は午前6時から午後10時、夜間は午後10時から翌日の午前6時
2.AAの地域は療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域など特に静穏を要する地域
3.Aの地域は専ら住居の用に供される地域
4.Bの地域は主として住居の用に供される地域
5.Cの地域は相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域

このように、地域によって騒音についての環境基準が定められているため、この基準を超えている場合は減額を適用できる可能性があります。ただし、都道府県ごとに上記地域についての区分や基準値などが異なるため、それぞれの都道府県の環境基準を確認した上で適用の可否を判断する必要があります。

また、道路・新幹線・航空機ごとに基準が異なる地域もあるので、これらの基準を確認し、該当地の騒音については騒音計などで計測することになります。 

土地ごとの条件を考慮して評価を行う

騒音による評価額の減額を適用するかどうかを判断するにあたり「路線価などに評価が反映されているか」「環境基準を超えているか」の2つがポイントになります。また、該当地だけでなく周辺の土地の騒音も確認する必要があります。周辺の土地にも同様の騒音がある場合は減額が認められないことがあるので、専門家の判断を仰いだ上で評価方法の適用を決めるようにしましょう。