日が当たらない土地の相続税評価額の計算方法は?

一般的に、日常生活をおくる上では、日当たりの悪い場所よりも良い場所の方が魅力的であると考えられています。相続税の土地評価でも、日が当たらない時間が一定時間を超えるなどの要件を満たした場合、評価額を減額することができます。今回は、「日照阻害のある土地」の評価方法について解説します。

「日照阻害」がある土地の評価額が下がる

近隣に高層マンションが建っているなど、日中の日当たりに問題がある場合は、相続税の財産評価において評価額を減額できる可能性があります。

【国税庁】
利用価値が著しく低下している宅地の評価

(前略)利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、(中略)利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。

(中略)
4(中略)日照阻害(中略)等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

ただし、宅地であっても「店舗」「事務所」「倉庫」など、住宅以外の目的で使用されている土地については減額が適用されない可能性が高いです。生鮮食品を扱っているお店やオフィスなどは、むしろ日が当たらないほうが良く、日が当たらないことが必ずしもマイナスにはならないからです。

また、該当地が路線価地域であれば「路線価」、倍率地域であれば「固定資産税評価額・倍率」を基に評価額を算出しますが、この路線価などが周辺の土地と比較して低い場合は、日照阻害が価格に反映されているため、10%の減額は認められません。 

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「日影時間」が評価に影響する

「日当たりが良い・悪い」は主観的な要素が強く判断が難しいため、1日のうち「日影時間」が一定時間あるかなどの「日影規制」の基準を超える場合に評価を減額できることになっています。日影規制は、1976年に改正された建築基準法で追加されたものです。

当時は日本経済の成長もあって中高層の建物が多く建築され、その影響で日当たりが悪くなる場所が増えため、「日照権」が主張されることが多くなりました。これを受けて日影規制が設けられ、建築物の高さ制限に加えて日影時間についても制限されることになったのです。

用途地域や距離などによって制限が異なり、規制の対象となる建築物と日影時間は以下のとおりです。日影時間は「冬至」における8時から16時までの8時間で計算され、この時間内で以下の日影時間を超える建築物は建てられないことになりました。

・日影の規制時間など

地域制限をうける
建築物
平均地盤面
からの高さ
敷地境界線からの
水平距離の範囲の日影時間
種別5m超10m10m超
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域
軒高7m超
又は3階以上
1.5m(1)3時間2時間
(2)4時間2.5時間
(3)5時間3時間
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域
高さ10m超4m 又は6.5m(1)3時間2時間
(2)4時間2.5時間
(3)5時間3時間
第1種住居地域
第2種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
高さ10m超4m
又は6.5m
(1)4時間2.5時間
(2)5時間3時間
用途地域の指定のない区域高さ10m超4m(1)4時間2.5時間
(2)5時間3時間

ご覧のとおり、商業地域・工業地域・工業専用地域は含まれません。前述のとおり、これらの地域は日当たりの悪さが必ずしもマイナスにはならないからです。なお、日影時間の規制は自治体によって内容が異なる場合があるので、確認が必要です。 

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このような土地は存在する?

日照阻害の可能性がある場合は、日影時間について一級建築士などの専門家に「日影図」の作成を依頼し判断を仰ぐことになりますが、建築基準法改正後に建てられた建物は、全てこの規制を踏まえて建てられているはずですので、日照阻害に該当する可能性は低いです。

ただし、鉄道や高速道路の高架の北側にある土地や、近隣に1976年以前に建築された高層マンションや違法建築物などがある場合は日照阻害の可能性があるので、日影時間と路線価などを確認した上で減額の適用可否を判断することになります。