都市計画道路が通る予定の土地を相続したら?
既存の道路が拡幅されたり、今まで道路ではなかった土地が「道路予定地」となったりすることがあります。相続した土地がこれらの対象となった場合、その土地の相続税評価額はどうなるのでしょうか。今回は、このような「都市計画道路」と相続税評価について解説します。
都市計画道路とは
都市計画法では、都市計画を「都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画」と定義しています。
戦後の高度成長によって都市への人口流入や土地開発などが増えた結果、都市の環境悪化や都市周辺地域における土地利用の混乱などが起きました。都市の無秩序化を防止し、秩序ある発展を図ることを目的として、都市計画法は時代とともに改正され、現在に至っています。
都市計画では、開発を行う地域と禁止する地域を定めたり、「用途地域」によって建築物の用途や建蔽率・高さ制限などを設けたりしています。また公園・学校・下水道などの「都市施設」も計画され、この中に「道路」も含まれます。都市計画道路とは、その周辺の生活者の利便性を向上し、良好な都市環境を確保するために整備される、都市計画によって定められた道路です。
都市計画が決定され、都市計画道路の予定地となった場合は、その土地の利用について制限が設けられます。予定地内で建築物を建築(新築・増改築等)する場合は、原則として都道府県知事の許可が必要です。
「都市計画に適合した建築物」「2階以下でかつ地階を有しない」「主要構造部が木造、鉄骨造等でかつ、容易に移転・除却できる」といった要件を満たす場合に限り許可が下ります。ただし、要件を緩和している自治体もあります。
相続税評価額はどうなる
都市計画によって利用が制限されている土地を相続した場合は、以下の3項目をもとに「補正率」が決まり、それを用いて相続税評価額を算出します。
1.地区区分
地区区分は、国税庁が定めている「路線価図」で確認することができます。路線価がない「倍率方式」の地域にある土地は、原則として「普通住宅地区」として計算します。
2.容積率
容積率は、自治体が公表している「都市計画図」で確認することができます。容積率の他に、高度地区の種別や建蔽率が地域ごとに表示されています。容積率が大きいほど、補正率は低くなります。
3.地積割合
地積割合とは、該当の土地全体の地積に占める都市計画道路予定地の地積の割合のことです。地積割合が大きいほど、補正率は低くなります。
地区区分 | ビル街地区 高度商業地区 | 繁華街地区 普通商業・ 併用住宅地区 | 普通住宅地区 中小工場地区 大工場地区 | ||||||
容積率 | 600% 未満 | 600%以上 ~700%未満 | 700% 以上 | 300%未満 | 300%以上 ~400%未満 | 400%以上 | 200% 未満 | 200% 以上 | |
地積 割合 | 30%未満 | 0.91 | 0.88 | 0.85 | 0.97 | 0.94 | 0.91 | 0.99 | 0.97 |
30%以上 ~60%未満 | 0.82 | 0.76 | 0.7 | 0.94 | 0.88 | 0.82 | 0.98 | 0.94 | |
60%以上 | 0.7 | 0.6 | 0.5 | 0.9 | 0.8 | 0.7 | 0.97 | 0.9 |
この3項目によって上記のように該当地の補正率が決まり、該当地全体が都市計画道路予定地でなかった場合の土地の評価額に、補正率を掛けて評価額を算出します。
都市計画道路予定地がある土地の相続税評価額=自用地評価額×補正率
道路が通る予定かどうかを確認する方法
都市計画道路の予定については、各自治体の都市計画課などで資料を入手できます。またインターネットで都市計画図などを公表している自治体も増えており、自分の土地が都市計画道路予定地かどうかを確認することは難しくありません。
都市計画道路は、計画決定、事業の認可、用地買収、工事開始という流れで完成します。最終的には予定地部分を売却することになるため、それを考慮して土地の利用を検討する必要があります。