遊休不動産資産を活かすための新たな活用方法
空き家問題の内訳からみる課題は「多すぎる賃貸」と「その他空き家」
相続関連の話題でも注目を集めている空き家問題の中身を少し細かく見ると、昨今指摘されている、 作り手や不動産オーナーの都合で建てられる賃貸住宅の過剰供給に加えて、 「その他空き家」の存在が量的にも地域的な広がりとしても課題となっていることがわかります。 「その他空き家」というのは、自分は使わないけれども売るでもなく貸すでもなくという状況になっている空き家です。 さらに、この中には放置されたことで使えない状態になっている建物以外、つまり使えるけれども放置されているものも含まれています。
住宅の活用方法の可能性を広げる住宅宿泊事業法(通称、民泊法)とは
こうした放置される不動産、いわば遊休不動産の存在という課題が明らかになりつつある中、 「新たな使い道」の一つとして今後注目されてくると言われるのが「民泊」活用です。 ご存知の方も多いと思いますが、民泊とは旅館やホテルといった「旅館業法」に基づいた宿泊施設ではなく、一般の住宅で宿泊事業を行うことを指します。 そもそも旅館業法の目的は法律の条文に示されている「旅館業の健全な発達を図るとともに、 旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与すること」、 つまり宿泊者に安全で快適な滞在を提供することですが、その決まりを一般住宅にも適用することは困難です。 しかし、後にも書きますが、旅館業法に適合した施設の拡充だけでは急増する宿泊需要、 特に外国人観光客を顧客にした宿泊には対応し切れず、民泊の必要性が注目され始めました。 時代を先取りした宿泊サービスを提供する施設や個人の広がりが出始めると、そこで顕在化した宿泊にまつわるトラブルに対応、 あるいはそれを規制する法律もなかったことから民泊という新たな宿泊形態に対応する現実的な法規制の議論が起こり始めました。 そうした社会情勢の変化を受け2017年3月10日に閣議決定されたのち、 2017年6月1日に衆院、2017年6月9日には参院でも可決され成立し、 2018年6月15日から施行されました。
民泊新法の議論の背景にあった外国人観光客の急増と意識の変化
2017年10月に観光庁から発表された「1~9月の訪日外国人旅行者」の数は、 2016年同時期(1~9月)の1797万人強を超えて、すでに2000万人を上回る2119万6400人でした。 全体で18%弱の伸びですが、この平均伸率を上回るのが韓国、香港、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ロシアといった国々からの観光客の訪問です。 このような急激な訪日外国人観光客数の増加によって既存の宿泊施設の不足が目立ったこと、 さらに訪日外国人観光客の多様なニーズ(宿泊費用やグレード、スタイル等)に既存の宿泊施設だけでは、対応しきれなくなっていると考えられます。 また、こうした需要の変化だけではなく、住宅を資産として保有する以上自分が使わない間は「他の人に使ってもらっても構わない」、 「それがいくばくかの収入になるならなお良し」というシェアリングエコノミーという考え方に柔軟な世代の登場という供給側の意識変化もあったと思います。 何れにしても需要サイド・供給サイドどちらにも少しずつ変化が生じて顕在化した結果、台頭してきたのが「民泊」だったと言えます。
法律に定められる「民泊に使える住宅の定義」と「適用される条件」とは
まず民泊とは「住宅に人を宿泊させる行為」であり、そこでいう「住宅」とは「家屋の中に台所、浴室、便所、洗面設備等の設備があり、 実際に人の生活拠点として使われているところ」または「民泊利用の前後に人に貸し出ししている家屋」だと定義されているそうです。 これは知っている人が多いと思いますが、さらに「住宅に人を宿泊させる行為」は「年間180日を超えない」ことが条件とされています。
遊休不動産資産の活用法としての民泊の可能性
遊休不動産資産の活用法としては営業日数制限や稼働率の可能性を考えると、 宿泊需要が集中する大きな都市や有名な観光地でなければ高い収益性を期待しにくい事業なのでは?と考えがちです。 しかし最近はSNSやインターネットでの情報拡散が進み、私たち日本人が気付かない価値が世界から気付かれています。 もちろん無責任にどこでも可能性がありますとはいえませんが、「その他空き家」化した遊休不動産資産は活用することで真に資産化します。 ただ保有しているだけでは固定資産税や都市計画税の累積でむしろ負債となる不動産(「負動産」と言われることも)となりかねません。 保有している不動産資産を「真の資産」にするための方策、すなわちお金を生む資産とするための方法として勉強されてみても良いかもしれません。